瓜連まちの風土記 第5巻
瓜連のまちと常福寺
【花と茶のかねこ園】 ふるさとの絆を育みいろどる 花の博物館 人々の笑顔をひきだす花の学芸員が 家族の幸せをお届けする |
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◆花は暮らしを彩り、人を集うための重要な装置である。 ◆まだ記憶の奥に、暮らしのリズムが生き続けている瓜連のまちであるからこそ、花屋さんがあり、みんなに幸せをお届けする仕事をしている。 ◆かねこ園は、いままで忘れてしまった暮らしのリズムを、それをお届けする喜びを失ってしまった人々に遠い記憶の中に埋め込まれたそれを思い出させる暮らしの学芸員である。 |
瓜連駅から少しだけ歩いたところに 舗装された道路がある。 そこまでの道のりは 砂利道やぼこぼこの道とはちがう 昔からの街道である。 この道路にそって まちが形成されてきたのだろう。 |
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いまではさびれてしまって空き店舗が 連なっているものの、地元資本のスーパー や老夫婦が営んでいるなつかしい玩具店 などがいまでも店を続けている。 すっかりすたれてしまった瓜連商店街に あって、ひときわかがやいている 一軒のお店があった。 「花と茶のかねこ園」という花屋である。 |
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店先には色とりどりの花が いきいきと咲き、並べられていた。 このお店の存在が、 この通りを明るく暖かく演出している。 |
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母の日に訪れた時、 お母さんのプレゼントの花を選んで、 ラッピングをしてもらえる。 ハロウィンの季節には、 店内がかわいいカボチャの置物で いっぱいに飾られている。 |
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いつ訪れても、季節にあわせて、 草花で空間をデザインし、 花のある暮らしの楽しさをみせてくれる。 私がこだわりを聞いてみると、 「特にない」 ということばがかえってきた。 きっと「こだわらない」で居心地のよい 場所をつくるということなのだろうと 私は勝手に解釈した。 |
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真剣な表情で、花束のラッピングをしている 店員さんの向こう側から、 突然人々の笑い声がきこえてきた。 |
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近所の人々が遊びにきているのだろう。 お菓子を食べながらゆっくりとお茶を飲み、 笑顔で話をしている。 私の頭には、 それまですっかり忘れてしまっていた 「だんらん」 という言葉がうかんできた。 |
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私が店内にいる間、お店の中では、 笑い声がたえることはなかった。 きっと話がはずんでいるのだろう。 彼らの声のボリュームは だんだん大きくなっていく。 |
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ここはお店なのだから 商売の邪魔をしてはいけない などというバリアは もうとっくになくなっているらしい。 |
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このお店に来た人は、みんな話したい ことを話したいように話している。 そして私も彼らにひきこまれ、 何かとても元気になったような気がした。 |
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店内に、「瓜連ミニバスケットボール スポーツ少年団の団員募集」「幸せを 呼ぶグリーンステッチバンド」などの 張り紙がある。 このお店で花を買う人、このお店に集い 話をする人、この道を通る人がそれを見て 情報を得ているのだと思う。 |
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この花屋さんは、 人々の生活を豊かにする情報、 コミュニティの情報、いろいろな情報や きっかけを配信していることにも 気づかされた。 そして、ここはただの花屋ではない花を テーマにした地域社会の博物館であると 確信した。 |
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かねこ園から帰る道で、 瓜連中学校の女子生徒が自転車で 遠くからこちらに向かい走ってきた。 私の少し前を歩いていた おばさんに大きな明るい声で 『こんにちは!』とあいさつをしていた。 |
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そして、そのおばさんも 『こんにちは、気を付けて!』 と、笑顔で返した。 地域の人たちがあたり前のように あいさつをかわし、 コミュニケーションがとれている。 なんとステキなまちだと思った。 |
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その女子生徒は、私にも笑顔で 『こんにちは!』と言ってくれた。 とっさに私も『こんにちは!』と返した。 私の顔もきっと笑顔になった。私は そのとき、うれしさでいっぱいになった。 このまちは観光施設も大きな産業もない、 小さないなかのまちだけれど、なんだか とても大好きになった。 |
花と茶のかねこ園 住所:〒319-2102 茨城県那珂市瓜連1645-1 電話:029-296-0683 |
2015年3月20日 発行