瓜連まちの風土記 第7巻
瓜連のまちと常福寺
【龍崎玩具店】 あしたの博物館 子どもの夢を応援する魔法使いとの 出あいがみんなを元気にする |
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◆昭和22年に創業した玩具店で、夫婦でお店を切りもりしている。 ◆駄菓子と玩具が並んだお店の片隅で、釣り具も販売している。 ◆放課後になると駆け込んでくる子どもたちを夫婦のあたたかい笑顔で元気にしている。 ◆半世紀もの時を超え、瓜連の子どもたちをみつめ、夢を与えつづけてきたあしたの博物館である。 |
「おもちゃ」と「つり具」という不思議な組み あわせと(6)0214という赤字の電話番号で 記されたロゴにひきつけられた私は、思わず 龍崎玩具店の前にいた。 その扉の向こう側でなつかしい駄菓子たちとの 出会いをきっかけに、時を超える旅を体験する ことになるということなどその時の私には想像すら できなかった。 |
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私が訪れたお昼前の時間は、店内はひっそりと 静まりかえっている。それもそのはずで、この お店の主役である子どもたちはまだ学校で勉強 しているのだから。 突然の見知らぬ訪問者である私を、仲むつまじい 2人の老夫婦が、昔ふるさとで出会ったなつかしい 笑顔で迎えてくれ、お店の歴史をお話してくれた。 |
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龍崎玩具店は、今年で67年を迎えたという。 「瓜連の子どもたちに幸せを届けたい」と考えた この老夫婦の父と母がつくったお店である。 親子二代にわたり、夫婦でチカラをあわせて 店を切りもりしてきたという。 |
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高度経済成長の時代は、瓜連の商店街もにぎわって いた。瓜連のまちにたくさん子どもがいたという。 彼らは、学校が終わると、おこづかいをにぎりしめ、 店にかけこんできて、おめあての玩具や駄菓子を うばいあった。 その時代のことをなつかしく語ってくれたのは、 ご主人の斉さんである。 |
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平成の時代になると、瓜連のまちなかで生活する 子どもたちがめっきり少なくなってしまった。 このごろは、放課後になると、遠くの住宅地から お母さんに、最近ではおじいさんやおばあさんに クルマで連れてきてもらって、駄菓子や玩具を 買ってもらうようになっていると奥さんの弘美さんが お話してくれた。 |
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子どもの暮らしのスタイルは大きく変わってしまった が、駄菓子や玩具を手にして、目をかがやかせて 遊ぶ子どもはいまも昔も変わらないという話を 奥さんから聞いてなんだかほっとした。 |
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どこのまちからも子どもが消えてしまった。 そして、かつてどこのまちにもあった玩具や 駄菓子のお店が次々にお店をたたんでいる。 子どもが減り続けている小さな瓜連のまちで、 こんな小さなお店がいまも続いているその理由 を確かめてみたくなって、子どもたちが集まって くる放課後もう一度お店を訪れてみた。 |
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放課後、子どもたちがあふれる元気いっぱいの 龍崎玩具店は、夢のミュージアムへとその姿を 変えていた。 せまいお店を歩きまわって今日の宝物を探して いる男の子がいる。 宝物の品定めを相談している親子がいる。 あちこちで、子どもたちが探した今日の宝物を 交換しあうおしゃべりがここちよく聞こえはじめる。 |
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そんな子どもたちをとびきり上等のやさしい笑顔で 励ましている龍崎さん夫婦は、まるで夢を応援する 魔法使いのようにみえる。 その雰囲気にとけこんでしまった私に、いつのまにか 子どもの時持っていた夢や好奇心があざやかに よみがえってきた。それは私がディズニーランドに 行くたびに感じる不思議な気分と同じであることに 気がついた。 |
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老夫婦に、長く商売を続けるための秘訣を 聞いてみた。 一人でも多くの子どもたちが何か夢を持って帰れる ように、安くても心にのこる商品をそろえるのが 斉さんの仕事であるという。 斉さんがそろえた宝物を、子どもたちが夢をさがす ことができるように展示し、いつも笑顔であしたの 元気を届けるようにしてあげているのは、弘美さん の役割であるという。 |
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息がそろった2人の魔法に引き寄せられて、 今日も瓜連の子どもたちは、龍崎玩具店で 夢をみるための買い物をし、遊んでいる。 |
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私の視点 |
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モノがあふれているいまの時代、駄菓子は、 スーパーやコンビニで買うのがあたり前に なってしまった。しかし、スーパーやコンビニの 駄菓子コーナーでは、はじめから、お店の人との コミュニケーションなど想定していない。 それを買い、みんなでわかちながら遊ぶ子ども たちの笑顔を想像して品ぞろえしたり、そろえた 駄菓子で一人ひとりの子どもたちが夢を抱くように 展示したり、一人ひとりの子どもがあしたへ夢を抱く ような働きかけをしたりしたら、膨大なコストを計上 しなければならなくなる。 |
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私が今回訪ねた龍崎玩具店には、子どもたちの夢を 応援してくれる魔法使いがいました。そしてここでは、 魔法使いのおじさんとおばさんから、スーパーや コンビニでは買えない宝物、あしたへの夢を買うこと ができます。 2人の夫婦は、瓜連の子どもたちに夢を与えるために、 宝物をそろえ、宝物を展示し、その宝物で子どもたちに 夢をみせてくれる学芸員です。 |
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こんなステキな魔法使いがいるミュージアムにぜひ 足を運んで夢を買っていってほしい。 私が歩いた瓜連には、この駄菓子屋さんの夫婦の ような、子どもたちの夢を応援してくれる魔法使いが まだまだたくさんいます。町を歩き自分の夢を応援 してくれる魔法使いと出あえるという楽しみがある コトは、瓜連のステキな魅力です。 みなさんぜひ一度足を運んでみてください。 |
2015年3月20日 発行