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瓜連まちの風土記 第31巻

瓜連まちの風土記 第31巻

静神社と静駅

 

【さくらの博物館】
人がつくった桜の博物館

 多様な桜の観方と遊び方にであえる
『第31巻』の画像
◆桜の博物館の顔を持つ静峰ふるさと公園には、いつ訪れても宝物をみつけることができる。
◆春に咲く桜も、秋に咲く桜もある。
◆丘を登り、公園を見下ろしてみると、一面に人がつくった自然がひろがる。
◆そこには、いつも小さな生き物がいて、小さな花が咲いている。
◆それらをじっと見つめれば、あなたにしかみえない宝物を必ずみつけることができる。

私がこの前、静峰ふるさと公園を訪れたのは、
今年の春さきだった。

ちょうどあたたかくなりはじめの季節で、
桜は満開とはいかないまでも、
きれいな花をつけはじめていた。
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そして今回訪れた秋は、気温も低く、
葉桜も落ちはじめてきた。
春とは比べものにならないくらい
すっかり魅力はなくなってしまったのである。
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ここはもともと、桜の名所にするために
つくられた公園なのだから、春に咲くサクラ
以外の植物はそう多く植えられていない。

だから、桜の季節以外に、この公園を訪れて
何もないと感じるのは当然である。
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しかし、それでも公園の中を歩いていると
人と出あうのだから驚きである。

遊具で遊んでいる子どもがいる。遊んでいる
子どもを見守る親もいる。サクラの木の下で
休んでいる親子もいる。ベンチに座り、
おしゃべりをしている年の離れた女性たちもいる。
仲良く連れだってやってきた夫婦もいる。
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こんなにたくさんの人々をひきつける何もない
はずの公園の魅力とはいったいどこにあるの
だろうか。
広くて、遊ぶことができる空間が広がっている
からなのだろうか。散歩をするのに快適な道が
あるからなのだろうか。公園の隣に静神社や
手接足尾神社があるからなのだろうか。
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その理由はいくつか思いつくが、地元の人は、
居心地がいい憩いの場としてこの公園を利用
しているのだろうと思う。
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公園の休憩所で、一人の女性に出あうことが
できた。

彼女は私たちに、「丘の上をのぼってごらん」
と教えてくれた。なぜ彼女は私たちに丘へ登る
ことをすすめたのだろうか。

彼女はきっと、丘の上から公園が一望できる
ことをおしえてくれたのだろう。
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春が来れば桜が咲き、桜に埋めつくされた
見事な景色を見渡すことができる最高の
スポットを教えてくれたのだろう。

私たちは、勝手にそう思い込んで、
丘にのぼってみたのであった。
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そしてその途中あるものを見つけた。丘の下の
道に沿って植えられている低いサクラの木の
小さな白いつぼみがふくらんでいて、ところ
どころに花を咲かせていたのである。
丘の下の道沿いに、等間隔で植えられていた
それは、フユザクラで、それはまぎれもなく
秋に咲く桜であった。
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枯れ葉たちの茶色い世界で埋めつくされようと
している公園のはしっこで、まっしろい小さな花を
つけるその姿は大変可愛らしく、とても鮮やかな
雰囲気をかもしだしていた。
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ソメイヨシノが植えられた公園のサクラばかり
目にしてきた私たちは、それ以外のサクラの
花があることをすっかり忘れていた。
まして冬に咲くサクラがあったことなど
考えることすらしてこなかった。
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静峰ふるさと公園には、ヤマザクラ、ヤエザクラ
などたくさんのサクラの花が植えられている。

そして秋に咲くフユザクラも植えられている。
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かつて、人々が好きなサクラを持ち寄って
つくった公園が日本中にたくさんあった。

ソメイヨシノが満開に咲き誇る公園を
市役所が税金でつくるようになって、
たくさんの種類のサクラが植えられている
手づくり公園は、すっかり存在感がなくなって
しまった。
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そうであればなおさらのこと、瓜連の生活者が、
チカラをあわせてつくったこの桜の公園は、
希少価値がある博物館であるといえるだろう。
いつの季節でも多様な顔を持っている姿に
出あうことができるこの公園を散歩すれば、
ステキな宝物をみつけることができる。
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那珂市の静峰ふるさと公園は、「日本のさくら名所100選」に選ばれている。
昭和40年に造園されて以来植栽等を重ね、現在は約2,100本の八重桜(関山など約10種類)と、ソメイヨシノ約200本が園内に点在している。

住所:茨城県那珂市静1720番地1
電話:029-296-1976

 
2015年3月20日 発行

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