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瓜連まちの風土記 第37巻

瓜連まちの風土記 第37巻

北城地区と田園風景

 

【北城の森】
妖怪がいる森の博物館

 隣から誰かがあなたにささやきはじめる
『第37巻』の画像
◆誰もいない北城の里山を歩いて、じっと耳をすませば、鳥のさえずりにシンクロして何者かのささやきが聞こえてくる。
◆人の手が加えられているにもかかわらず、ずっとそのままその場所にあり続けてきたようにみえるありのままの景色とそこら中に置かれている祠(ほこら)を見ていると想像の翼を限りなくひろげることができる。
◆北城の森は、人と自然がともに生き続ける美のカタチにふれさせてくれる不思議な場所である。

瓜連の北のはずれの北城という集落を歩いた。
黒い森を背景に小さな家と畑が点在し
その合間を曲がりくねった小さな道が
貫いている。
ジブリのアニメにでてくる
トトロの森のような
美しいまちであるのはいうまでもない。
37-03

車と出あうことはほとんどないし
人とすれちがうこともない。
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シーンと静まりかえった里のまちで
せまい曲がりくねった道を
たった一人で歩いていると
感性が研ぎ澄まされていく。
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普段はまったく感じたことがなかった
光や風がつくりだした景色が
気になってくる。
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風の音や小鳥たちのさえずりが
ここちよく感じられるようになる。
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誰もそうであったに違いないと思うのだが
子どもの頃はいつもそうであったように
毎日の暮らしの景色や音との出あいに
感動し、不思議を感じていた。
いままで、すっかり忘れてしまっていた
当時の記憶がよみがえってくる。
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黒い森が近づいてくると
道に差し込む光も少なくなり
ますます静かになり、
私の感性はますます研ぎ澄まされていく。
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わずかばかりの日の光が
差し込んでいる森の入り口の
小さな祠(ほこら)が私の視界に出現した。
きっとこの森には
昔からの守り神が住んでいるのだろう。
私の想像力はますますふくらんでいく。
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誰かに見られているような気になる。
囁かれているような気持ちになる。
そして、妖怪が出てきて
イタズラされそうな気がしてきた。

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遠い昔、北城集落で生活してきた
名も知れない人々が
この小さな祠(ほこら)を祀(まつ)り
いま生活している人々が
それを継承してきたのだと思う。
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彼らもきっと光のコントラストの美しさに
感動したにちがいない。
鳥のさえずり以外に無駄な雑音がいっさい
聞こえてこない静けさに感動したにちがいない。
妖怪が出てきてイタズラされる、そういう
想像をふくらませていたにちがいない。
そして、自分を超える大きなチカラに感動した
証として、彼らは祠(ほこら)をつくり、それを
守ってきたのだと思う。
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そのように考えると、いま私が歩いている
この北城集落は、自然の中に人の手が加わって
いるのにその景観が壊されていないことが
みえてきた。
そして、人と自然がうまく共存していることが
みえてきた。
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北城集落では、いまと昔が、人と自然が見事に
結びついて美しい姿で守られているのです。
あなたもぜひ、妖怪がいる森の博物館を訪れ
五感で幸せを感じて下さい。
37-27

 

 
2015年3月20日 発行

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