瓜連まちの風土記 第45巻
人とシゴト
【オトコたちの夢】 時間ミュージアム ホンモノづくりの美学と出あいに 生きるチカラを学ぶ |
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◆ホンモノを追求するオトコたちが集い、時間やおカネを度外視して、おいしいソバにこだわり、おいしいソバをつくる知恵と技をみがきあげた。 ◆ホンモノを探し、見極め、ホンモノを追求するオトコたちの夢とロマンにふれてみれば、知や学びと好奇心が人を結び、みんなの夢を拓く可能性があることがみえてくる。 |
ソバが大好きな瓜連のオトコたちがつながって 誕生した研究会がある。 その名を蕎麦研究二八会という。 彼らは、毎月1回定期的に研究成果を持ち 寄り、交換している。 |
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本日の研究会は、メンバーの一人である 堀口さん宅の離れで行われる。 堀口さんの離れには、囲炉裏(いろり)がある。 研究会は、この建物が建った時に発足した。 冬の寒い中、壁以外に何もおかれていない ひろい部屋に、囲炉裏を囲んで男たちが 集まって活動がスタートしたという。 |
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「普通なら部屋にあるけれど、ここに無い 物はなんだと思う」 部屋に案内されると、堀口さんから クイズが提示された。 |
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私たちは部屋の周りをきょろきょろと見渡し ながら考え、答えをみつけることができたもの、 それは時計であった。 この部屋には、意図的に時計が置かれて いない。 そして、堀口さんから時計がないというのが、 彼の活動のコンセプトであると教えてもらった。 |
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彼らは、ソバの研究を仕事でやっていない。 やりたいように、ありのままに、知恵を だしあい、技をみがき、おいしいソバを 追求している。 好きだからこそやっていて、極められる 何かがある。 |
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仕事が中心に動いている私たちの社会では、 時間やお金にしばられた生活をしいられて しまう。 そこでは、ホントウにやりたいこと、やって みたいと思う何かに挑戦する機会が ますます少なくなってしまっている。 |
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そうであるからこそ、堀口さんが教えてくれた ように、時間を気にしていては楽しくない。 そんな機会をつくることができるなら、今まで みえなかった何かがみえてくるということに 気づかされる。 |
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時間を忘れてしまった男たち、夢を持っている 男たちとともに語りあいながら、炭で火をおこし メンバーが集まるのを待っているのも楽しい ひとときであった。 |
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気心がしれた研究会の参加者だから、席の 場所も暗黙に決まっている。みんなが自然に 話の輪に加わるようになる。 ソバの研究であるから、話題がやはり ソバの情報交換に集中する。一人ひとりが、 時間やカネの制約を受けないで、ソバを食べ、 学ぶ活動に情熱を燃やしている研究姿勢に あらためて感心させられた。 |
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こだわりを追求している人というと どうしても頑固であるというイメージが つきまとってしまう。 蕎麦に情熱をもやしている男たちの集まり ということを聞いていたので、はじめは私も そう考えていた。 |
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しかし、私の予想に反し、研究会に参加して いる男たちは、皆とても優しかった。 メンバーが全員そろって旬の素材を持ち寄り、 炭火で焼き、お酒を飲む会がスタートした。 男たちは、まだ緊張の解けていなかった 私たちに「酔っぱらいの集まりだよ」といって 私たちにも気を使ってくれた。偏屈でも ひとりよがりでもない。やさしさあふれる 魅力的な紳士であった。 |
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本日のそばを打つ当番は、萩野谷さんで、 そば打ちの達人らしいのである。 萩野谷さんの打ったそばは、一見そうめん のように細い麺だが、千切れることは無い しっかりしたこしのあるそばであった。 |
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仕事を忘れ、いくつになっても夢を求め、 好きなことをして、人とつながり、談笑する。 そこに、ホントウの幸せ、生涯をかけて 追求する道があることに私たちはきがつく ことができた。 |
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研究会の入会審査は厳しく閉じられている。 メンバー全員がオーケーを出さなければ 入ることができない。 だけれども、気のあうメンバーで構成されて いるからこそ争いゴトは一切ないという。 私から見て、とても理想の仲間で、道を 究めていける理想の集まりである。 |
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ふるさとから夢が失われ、人と人が繋がらなく なってしまったいま。生きるカタチと志を共有 するメンバーが集い、時間を忘れ情熱を注ぎ 込む。このような会の存在が求められている と思う。 おいしいそばにこだわる男たちの研究会との 出あいをとおし、モノが人を繋ぐ懸け橋になる 可能性を感じることができた。 |
2015年3月20日 発行