額田まちの風土記 第1巻
額田城
大自然の宝島 |
オオムラサキ。 それは日本の国蝶で、 紫に白と黄色の水玉模様の 美しい羽を持っている。 天然記念物であり、生息数が少なく、 なかなか見ることができない 貴重な生き物。 そしてそれはお宝。 さあ、自分だけのお宝を探す 冒険に出よう。 |
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ここは、額田城跡。 ここが冒険の舞台。 この額田城は、 11も丸のある 大きな大きなお城だった。 今はもうお城はないけれど、 山のようになっていたり お堀がのこっていたりと、 お城のおもかげはのこっている。 そして、たくさんのお宝が ねむっている宝島なのだ。 さあ、階段を下りて中に入ろう。 |
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階段は深い所まで続いている。 さっきまでの住宅街の景色とは一変、 周りは木の幹や竹、 土のかべにかこまれ、 いつも見ている風景とは まったく別物である。 階段を一段一段下りるたびに ワクワク感が増す。 木々は一本一本が高く生え、 緑の葉っぱが光に照らされてかがやき、 土はふかふかのベッドのよう。 |
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小さな橋がかかっている。 橋の下にはたくさんの植物が生え、 水は流れていない。 なんだか不思議で面白い橋だ。 橋を渡り、坂を上ると、 ブランコが見える。 木の坂をロープで吊るしただけの 簡単なもの。 このブランコに座って自然の中を ゆらゆらとゆられれば、 この自然の中を飛ぶ鳥になった気分に なれるかもしれない。 |
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両わきを丸太で仕切られた道に入る。 この道は いたる所にきのこが生えている、 きのこの道だ。 きのこは大小さまざまで、 どれも不思議な形をしている。 シイタケのような 食べられそうなきのこもあれば、 赤くて毒のありそうなきのこもある。 両脇の丸太は、 ついその上を渡りたくなる。 両手を広げてバランスをとりながら 丸太の上をすすめば、 まるで綱渡りをしているかのよう。 |
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広場が見える。道が開けた。 広場にはカラフルな花が咲いている。 そのはずれに、アルミのテーブルと ちょっと変わったベンチがある。 このベンチは 板とお酒のケースでできている。 きっと地元の人が作ったのだろう。 しかしこのベンチは 花とは反対側を向いている。 不思議に思っていると、 なんだかベンチに座りたくなる。 近づいてみて気づく。 このベンチから見える景色は、 この城あとを高い位置から 見下ろすようになっていて、 美しい自然を一望できるのだ。 そう、ここは、額田の人の特等席。 |
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道なりに進んでいくと、 左右に分かれる分岐点に立つ。 右は、青と紫の紫陽花が交互に生えた 紫陽花の道。 左は、大きな白百合が咲くゆりの道。 さて、どちらに進もうか? |
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白百合の道を進む。 白百合のそばに、 何か紫色のものが落ちている。 気になって顔を近づければ、 日本のお宝を はっきり見ることができる。 紫に白と黄色の水玉模様、 オオムラサキだ。 ここに落ちているものは 残念ながらオオムラサキの羽。 しかし、まだオオムラサキは この城あとにいるかもしれない。 空を飛ぶオオムラサキを 見ることができるかもしれない。 |
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この先にもさまざまなお宝がある。 オレンジに輝く美しい百合の花、 ナスカの地上絵のようなコケ、 どこからかわいてくる水、 プクプクふくらんだ緑色の木の実。 この宝島のお宝は、土にうまった 歴史のあるものばかりではない。 今もかがやく不思議なお宝が たくさんねむっている。 目には何が写る。 なにが見える。 さあ、冒険に出よう。 |
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2017年2月13日 初版第1刷発行 | |
取 材 | :真山 知栄、阿部 未波 |
著 者 | :真山 知栄 |
写 真 | :真山 知栄 |
編 集 | :畑岡 祐花 |
発行者 | :日本地域資源学会 |