額田まちの風土記 第8巻
額田のまちの風景
誇りのタイムカプセル |
のどかな時間の流れを感じさせる、 茨城県那珂市の額田地区。 私はここでステキな「宝物」を 発見した。 いつもは見過ごしてしまう どこにでもある田舎の風景に きざみこまれた歴史の足あとを 探し出しながら歩いていると 感動がわきあがってくる。 額田のまちを歩いて、 歴史と対話することで、 私が感じたこと、考えたことを 述べてみようと思う。 |
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額田には、歴史がねむっている。 歴史は、額田の土地すべてを つつみこんでいる。 それは、教科書には書かれていない 小さいけれど、大きな歴史である。 |
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額田城を歩いてみよう。 うっそうとした林の中に、 過去の記憶が きざみこまれているかもしれない。 うっそうとした林にもかかわらず、 きちんと整備された遊歩道があり、 歩きやすい。 林の中を前に、前にすすんでいくと、 |
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その先の青空を背景に、 草花がさきみだれた 大地がひろがっている。 ここには二の丸のあと という看板がたっていた。 私がさっきまで歩いてきた道は、 ただの遊歩道ではない。 堀から二の丸まで続いている 歴史の道で、かつて武将たちが 歩いていた道であった。 |
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林をとおりぬけるおだやかな風が、 過去の栄華の残り香を現代に運んで くれているように感じさせる。 |
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額田でタイムスリップできる場所は、 城あとだけではない。 お寺や神社にも、 額田のまちで生活してきた人々の 記憶がきざみこまれている。 阿弥陀寺というお寺の敷地に 大きなしだれ桜がある。 春にはみごとな花をつけ ふるさとの人々が、 そのチカラをめでに訪れる。 |
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阿弥陀寺からしばらく歩いてみると その先に、かやぶき屋根の 鈴木家住宅がある。 江戸の文化と産業をデザインした 総合プロデューサー徳川光圀が 何度も訪れたその場所もまた 大切に守られていた。 |
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歩いてみればわかるのだが、 額田のまちのいたるところに、 鎌倉時代から江戸時代の歴史が、 きざみこまれている。 額田のまちは、過去と現在の記憶が 入り混じり、共存している。 このまちを歩いていると、 何気ない風景の1つひとつが 時間旅行へ誘ってくれる。 |
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額田の通りには、 食堂や洋品店もある。 そば屋、豆ふ屋、肉屋さんもある。 なつかしい風景をただよわせるお店が、 ひっそりたたずんでいる。 よくみるとお店の看板に「額田藩」 という文字がきざみこまれている。 |
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私は、額田藩という看板に ふるさとの誇りをみたような気がした。 額田で生きていることは、 彼らにとって1番の誇りである。 その誇りを子孫にのこしていこうとする 気持ちを感じた。 |
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「遺産」、「記憶」、「誇り」。 これらはすべて 額田が生んだ宝物であり、 未来まで継がれなければならない タイムカプセルである。 過去を風化させないように 何度も何度も書き直しては 伝えなければならない。 額田のまちには、過去の誇りと 未来のかがやきを与え続ける夢のような 誇りのタイムカプセルがある。 それは、今日もまた受け継がれていく。 |
2017年2月13日 初版第1刷発行 | |
取 材 | :阿部 未波、吉村 双葉 |
著 者 | :阿部 未波、吉村 双葉 |
写 真 | :阿部 未波、吉村 双葉 |
編 集 | :畑岡 祐花 |
発行者 | :日本地域資源学会 |