額田まちの風土記 第9巻
額田神社と彫刻
額田の人々が守ってきたふるさとの心意気 |
「木彫りの置物」と聞いて、 あなたは何を思いうかべますか。 サケをくわえた熊 福をよぶフクロウなどの動物、 仏様やお地蔵さん、 節句の人形といったところでしょう。 |
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那珂市額田の寺社をめぐると、 たくさんの素晴らしい 木彫り作品が鑑賞できます。 その中で1番印象的なのは、 額田神社の彫刻です。 |
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本殿にほどこされている花木鳥や 龍の木彫りを目にした時、 木々が組みあわせによって 創作されているのではと考えた。 1本の木からあのような繊細な作品が できあがると聞いて、びっくりした。 木のぬくもりを残しながら、 キレイにかたどられているのだから。 |
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額田神社は鹿島八幡神社と呼ばれ、 健康御守や安産御守などといった お守り等授与品がある。 ここは、 大祭礼と呼ばれる額田まつりが 開催される場所でもあり、 祭りに使用される山車が 保存されている。 |
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額田まつりは天保4年(1833) 磯くだりの代わりに、 大祭礼としてはじめられた。 当時から、 関東有数の祭りともいわれていたが、 大正13年の祭礼を最後に しばらく休止した。 しかし、氏子の皆さんの 「まつり復興」に対する熱い思いが 実を結んで、昭和51年8月29日に 規模を縮小して再開し、 現在まで受け継がれている。 |
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まつりは3年に1度行われ、 午前10時、 祭祀に始まり宮出式を行い、 神幸祭・遷幸祭の渡御を中心に、 鹿島神・八幡神の御神輿や 五台の山車、踊りの他、 いろいろなイベントが盛り込まれ、 地元はもちろん近隣の観客で 大変なにぎわいになるそうだ。 そして、 実際に額田まつりで使われている 山車を特別に見せてもらった。 |
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山車は、ひのき、杉、松材による 総白木のほぞ組(組立式)構造であり、 ヒノキ、松材を用いた透かし彫り、 浮き彫りの彫刻を ふんだんに用いているそうだ。 |
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そして、柄目町の山車の特徴は 多くの彫刻で 構成されていることにある。 正面左右の柱には、 白木で上り龍、下り龍が彫刻され 山車の周りには 干支の十二支が彫刻されている。 |
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また、鷹のように鋭く光る鳥や 波打つ水の情景、 むかい龍が描かれている。 |
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もう一つの染められている山車には、 鶴をはじめカメや松の木が見られた。 黒を生地とした色だったため 色鮮やかで目立つ装飾となっていて とてもきれいに見えた。 山車や寺社などにある木彫りは、 どれも見る人を引き付け、魅了する。 |
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境内には 徳川光圀のお手植えの真榊、 杉の木があった。 杉の木は樹齢推定300年。 落雷が多く、 地上1メートル50センチを残して 伐採処理を施しているが、それでもなお 生き続ける樹木から元気をもらえた。 |
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立派な木彫りと みんなでつくりあげる祭り、 大事に守られている樹木、 どれからも 人のやさしさとあたたかな心、 情熱を強く感じることができた。 様々な魅力に満ちあふれた 額田神社を守り続ける人こそ 宝物であり、その大切にする思いを なくさないでほしいと願う。 |
2017年2月6日 初版第1刷発行 | |
取 材 | :飛田 沙菜、辻 陽子、山形 奈々 |
著 者 | :山形 奈々、大月 友美 |
写 真 | :山形 奈々、大月 友美 |
編 集 | :畑岡 祐花 |
発行者 | :日本地域資源学会 |