額田まちの風土記 第19巻
ヘアーサロン関
顔も心もきれいになる魔法のミュージアム |
髪を切り、ひげをそり、 身だしなみを整え、 気分をリフレッシュする。 それが理容店の役割である。 ところが、外見だけでなく 心をもきれいにする魔法で、 訪れる人を元気にする 魔法のミュージアムが額田にある。 |
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額田の1本の路地を歩いていると、 赤、青、の渦を巻いている サインポールを見つけた。 上を見あげると、 こげ茶色の外装にたて書きで ヘアーサロンせきと記してある。 |
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ドアに手をかけ、ゆっくり開いて 入ると、「いらっしゃいませ。」の 明るい声にむかえられた。 目の前には、 ヘアサロンのコースが書いてある プレートとお会計場がある。 その右手に テーブルと4つの椅子がおいてあり、 窓からは明るい光がさしこんでいる。 |
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正面には3つのセットチェアがあり、 鏡の上のおしゃれな ブラケットライトが光を放ち 空間全体がかがやいている。 |
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「どうぞ、すわってください。」と お母さんがテーブルに私を案内し、 白いきれいなマグカップに コーヒーを入れてくださった。 あたたかいコーヒーを一口飲んで、 窓から路地の方をみると、 お客さんがやってきた。 |
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お客さんをむかえると、 お父さんのカットからはじまる。 ハサミの使い方が あざやかで小気味良い。 あっという間に お父さんのカットが終わる。 さっきまでコーヒーをいれていた お母さんが登場してきて、 ヘッドマッサージをはじめる。 その次に、ヒゲをそるのは 娘さんの役割である。 親子が暗黙の段取りをこなし、 またたく間にキレイに変身できる。 |
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その段取りが、 リズミカルで実に心地よい。 この段取りこそ、 ミュージアムであるのは いうまでもない。 |
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価値観が多様化した現代では、 世代ごとにおしゃれがちがう。 関サロンがすごいのは、 世代がちがう親子が、 それぞれの世代の志向にあわせて、 新しいサービスを積極的に 展開しているところにある。 |
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東京で理容を学んできた 2人の娘さんは、 「まつげパーマ」 「ヘッドマッサージ」など 都会の美容院が展開している それを理容店の強みをいかした 関サロンならではのサービスに 仕あげ、挑戦している。 彼女たちのそういう価値観に 共感したのだろう。 関サロンには、 女性客が増えはじめているという。 新しい風が 額田のまちに吹きはじめている。 |
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お店の中は、お母さんが 入れてくれるコーヒーの香りが 来た人を心地よくさせる。 その雰囲気にのまれるように、 人が次々にやってきては、 自然とテーブルを囲みはじめる。 近所の人たちがやってきては、 話のタネをまいて行く。 |
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私が取材している途中に、 ヤクルトレディがやってきた。 ヤクルトを売りながらも 話をはずませる。 忙しい合間をぬいながら、 お母さんは、 ここに来たお客さんに コーヒーを入れてくれる。 話の輪が次々につながり、 みんなで盛りあがる。 あたたかな笑い声が 店内にあふれている。 |
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さっききたお客さんの カットが終わった。 お客さんはきれいになった。 そして、お母さんが入れてくれた コーヒーをいただいて会話に加わる。 彼は、お店にやってきた時よりも もっとステキな笑顔にあふれていた。 |
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笑顔がステキなお父さん、お母さん、 そして美人な2人の娘さん。 ヘアーサロンせきは、 体も心もきれいにする 魔法のミュージアムである。 帰り際に、ふと鏡に目を向ける。 今までに見たことのないくらいに、 私は満面の笑みになっていた。 |
2017年2月20日 初版第1刷発行 | |
取 材 | :久野 明日輝 |
著 者 | :久野 明日輝 |
写 真 | :久野 明日輝 |
編 集 | :畑岡 祐花 |
発行者 | :日本地域資源学会 |