額田まちの風土記 第21巻
つぼ焼おおがね
伝統と真心の人情ミュージアム |
交通量の多い道路にそって 私たちを待っていたのは 物静かな雰囲気の建物と 店の存在を主張する 「つぼ焼」の看板であった。 |
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この場所が伝統に根ざした技と真心を こめて、お菓子づくりを続けている 「つぼ焼 おおがね」。 長く親しむことができる「味」の 発見ができるお菓子屋さんだ。 |
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お菓子、それは 日常を彩ることのできるもの。 お菓子、それは つくり手の思いがつまった宝物。 「つぼ焼 おおがね」は私たちの日常に 小さな幸せをもたらしてくれる菓子を つくり続けている。 |
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店内はとても落ち着きがある。 たくさんのお菓子が ならべられている。 おせんべいや 色とりどりの金平糖もある。 ガラスケースの中には看板商品 「つぼ焼」などの 生菓子がならべられている。 なじみのあるお菓子から はじめて見るお菓子まで 店内のたくさんのお菓子をみて 私は胸をおどらせた。 |
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「つぼ焼 おおがね」のお菓子は 4代目のご主人 大兼一順さんがつくっている。 記録があるわけではないが 創業して100年以上になるらしい。 |
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100年を超えた歳月を 額田のまちとともに生きてきた。 もともとはいまお店がある場所よりも 少しはなれたところに 店をかまえていた。 火事にあってしまったために 店をこちらに移動したという。 いまは 「つぼ焼」が看板商品であるが、 昔は 「酒まんじゅう」を それにしていたという。 |
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看板商品が それまで長く愛されてきた 「酒まんじゅう」から 「つぼ焼」に変わってしまった ことについて聞いてみた。 |
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いまから45年前に 何か個性のあるものが必要と思い 先代がつぼ焼をつくってみた。 それで人気になったらしい。 |
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創業以来ずっと愛されてきた お菓子を守るだけではない。 つねに新しい商品を生みだそうという 意欲を持ち続けているという。 お客さんの気持ちにこたえるために 感謝の思いを込めるために 改良に改良を重ねて新しい商品を うみだしたいと考えている。 |
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「つぼ焼」も進化して いまでは3種類ほどになった。 種類が増えるたびに 「芋うと(妹)ができたよ」といって お客さんに知らせるらしい。 ご主人のことばに 私の心もあたたかくなった。 |
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店の中に伝統を感じさせる 美しい箱を見つけた。 箱の中身は空っぽである。 |
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箱屋さんにお願いして つくってもらった特別な箱で お店のお菓子をいれて お客さんに渡すらしい。 |
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美しい和紙でできた箱は とてもはなやかで外国人への おみやげにも人気だという。 その美しさには 日本人である私たちでさえ もらったら感動するにちがいない。 |
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ご主人にお菓子をつくるうえでの 思いを聞いてみた。 意外な答えが返ってきた。 「創っているときに思いはない。」 |
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お菓子は繊細で手元がくるえば 味も形も変わってしまうから いつも集中しているという。 集中してお菓子と向きあうだけで 身体にしみこんだ たくさんのあたたかい思いが 指先からお菓子へこめられていく。 |
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ご主人は 「いつも喜ばれるものを創りたい。」 と笑顔で語ってくれた。 |
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いまでは息子さんである5代目と お孫さんである6代目が 修行中だそうである。 次の世代でつぼ焼にかわる看板商品が 誕生することを期待している と秘めた思いを話してくれた。 |
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静かであたたかみのあるお店 はなやかな和紙でできた美しい箱 やさしく寄りそう たくさんのお菓子たち それらにはすべて ご主人と奥さんの 思いがこめられていた。 それらの宝物たちが たくさんの人に笑顔をとどけている。 「つぼ焼 おおがね」は 伝統と真心がつまった 人情あふれるミュージアムであった。 |
2017年2月13日 初版第1刷発行 | |
取 材 | :林 優希、川崎 憲吾、佐川 愛理奈 |
著 者 | :堀内 瑠那 |
写 真 | :林 優希、川崎 憲吾、佐川 愛理奈 |
編 集 | :畑岡 祐花 |
発行者 | :日本地域資源学会 |