額田まちの風土記 第29巻
サタディースクール
子どもたちの夢を応援する 未来のためのミュージアム |
ここは茨城県那珂市額田である。 どこにでもある田舎な風景が ひろがる場所である。 だが、そこには、額田にしかない ふるさとの子どもたちを支える 絆があった。 |
|
額田の子どもを守り、 支える会がある。 会長の成田さんを中心に 土曜日に開かれる サタデースクールは、 額田のまちすべてを 学びの場にしている。 |
|
ここには教室も 決まった先生もいない。 地域全体が教室、教科書である。 地域のおじいさんや おばあさんが先生になる。 中学生も先生になる。 |
|
サタデースクールの活動のひとつに 「フラワータウンインぬかだ」 というプログラムがある。 そのコンセプトは、まちを花でかざり 行きかう人の心にも花を咲かせよう。 |
|
街にある花だんに花を植えるだけの 1回きりの活動とはひと味ちがう 額田の人々が力をあわせて、 花だんから手づくりしてしまう。 |
|
大人たちは、 コンクリートを汗水たらしてくだき、 花だんをつくる。 子どもたちは花だんに植える花々を いっしょうけんめいに水をあげて 種から育てる。 |
|
その花だんをつくりあげる活動は、 まわりの人の心も動かした。 やがてサタデースクールという かきねを飛びこえて近所の人や 学校をもまき込んだ活動に 発展していった。 |
|
夏の暑さに 花がやられていないか心配で、 その様子を見に来た子どもたち、 そんな子どもたちを悲しませまいと 近所の人がすすんで花だんに 水をあげるようになった。 |
|
そんな地域と子どもたちを つなげる活動を 額田の子どもを守り支える会では 1年を通して行っている。 |
|
「地域で子どもを育てる」 いまの日本で失われつつある考えだ。 それを完全に失ってしまったら、 その地域の大切な宝物が 失われてしまうような気がする。 |
|
会長の成田さんは、 その宝物を守り続けようと、 地域が持っているチカラを生かして、 子どもも大人もそして自分から 学び楽しめる企画を次々に考えだす。 |
|
たとえば、 100円ショップで買えるようなモノと 空箱のみを使ってつくった道具で行う 手づくりスポーツがそれである。 限られた場所や道具で どんな遊びができるか それを考えるところから プログラムづくりがスタートする。 成田さんは、自分で考えた遊びを 地域の大人や保護者と楽しむ。 |
|
道具も材料も限られているが、 そういう体験から得られる感動は、 お店では買えない。 |
|
そんな人と人との かかわりでしか得られない体験を このサタデースクールをとおして 子どもたちだけではなく 地域の人々にも与えている。 |
|
子どもにしか見えない世界、 大人になってからわかること、 それらを額田の人々は共有できる。 |
|
額田を歩いた際、 おじいさんと遊ぶ男の子や おばあさんと散歩をする姉妹に 会うことができた。 核家族化がすすんでいる現代では なかなか見ることができない 光景である。 そんな世代を超えたつながり。 そのつながりを育む 手助けをしているのが 額田のサタデースクールである。 最近は地域の人と 関わることも少なくなり、 家族との時間も減ってきている。 そんな失われつつある時間を 取り戻せるのが、ここ額田であった。 |
2017年2月13日 初版第1刷発行 | |
取 材 | :竹内 千聡、阿部 未波 |
著 者 | :竹内 千聡、阿部 未波 |
写 真 | :竹内 千聡、阿部 未波 |
編 集 | :畑岡 祐花 |
発行者 | :日本地域資源学会 |